それはどこへ行く物ぞ

今、私の目の前には箱がある。
先程宅配便のお兄さんが届けてくれた箱だ。
送り主は不明、書いてあるのだが全くもって見覚えが無い。
書かれていた携帯番号にも電話してみたが決まりきった女性の声で使用されていない番号だと告げられた。
寝起きだったせいで何も考えずに受け取ってしまったのが間違いだった。
送り返そうにもどこへ送ればいいのかわからないし、何より送料がもったいない。
箱を見る。
大きさは大体十五センチくらいの正立方体で受け取った時の印象はとても軽かった。
じーっと箱を観察すると、一体に何が入っているんだろうという好奇心がわき上がってきた。
気になって箱を開けてみた。
ふたを開ける前に危険物かもと思ったが、むくむくと育ってしまった好奇心は止められない。

「なにこれ？」

箱の中にはシュレッダーにかけられた色紙のような梱包材に包まれたピンポン球のような物が入っていた。
手に取ってみると温かく、ぬめぬめとしていた。
以前テレビで見た海亀の玉子と似ている。
気味が悪くなって玉子を箱に戻し、押入れにしまった。




数日が過ぎ、寒さが本格的になってきたのでコートを出そうと押入れを開けた。
すっかり忘れていたが例の玉子らしき物が入った箱が鎮座していた。
コートの入った収納ケースはその箱の後ろにある。
箱を出さなくてはコートが出せない。

「え……？」

仕方なく箱を退かすために持ち上げると少し重くなっている気がする。
ぎょっとして寒気がした。
急いで箱を開けてみる。
……玉子が大きくなっている。
数日放置しただけなのに玉子は一回り成長していた。
ふと思う、玉子は成長する物なのだろうか。
考えながらも静かにふたを閉め、箱を脇に置いて収納ケースからコートを取り出した。
収納ケースと箱を同じ場所にしまった。
次の日、近所の百円ショップで梱包材と例の箱より一回り大きい箱を買ってきて玉子を買ってきた箱に移し替え宅配便のお店に持っていった。
宛名は適当に選んで、送り主の欄は私に送ってきた人のものを参考にでっち上げた。

次に受け取った人はどう思っただろう。
少しだけ申し訳なく思ったが、それもすぐに忘れてしまう事だ。